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本物のコーチング事例~ある保育園の組織崩壊からの脱却~

急成長した保育園。しかし、その先には職員の大量離職。
気づかぬうちに進んでいた組織崩壊からの脱却
 
保育園システムコーチング事例概要
 ・期間:9 か月(インタビュー含む)
 ・参加人数:10 名
 ・コーチ:2 名

<背景> 設立5年目の保育園

保育士10名程度のアットホームな保育園としてスタートしたが、時代の要請(待機児童・ 保育園の不足)と立地の良さから園児の受け入れ数を拡大し、3年目に分園を設立した。そ れにともない職員も大幅に増員した。

職員が増加したことにより、保育の質が職員個人の力量頼みになる傾向があったことから、保育の質を向上、均一化しようと改革を進めていた。
会議で実行案(マニュアル作成)が示されはかられたが、トップダウンの実行案であったため、一応の同意は見られたにもかかわらず実行がされなかった。

実行されないのは職員間のコミュニケーションに問題があるとして、理事長より相談があった。システムコーチングの提案をし、スタートとなった。

 

<経過>
個別インタビュー

システムコーチングに参加するリーダー層 10 名(理事長含む)に個別にインタビュー(30 分程度)を実施。
現状とそれに対しての考えや気持ちを聞き取る。

インタビューで把握された現状

・子どもが好き、この仕事が好きで情熱をもって保育士という職業を選んでいる

・よい園にしたいと誰もが思っている

・会議がうまくいかない。伝達会議になって同じことを繰り返す

・決まったことが実行されない

・ウワサ話が多い

・本園と分園のコミュニケーションが不足している

・言いたいことが言えていない(風通しが悪い)

・ホウレンソウが不徹底である

・役職が機能していない(マネジメントが機能していない)

・信頼関係が強力とは言い難い

・疲弊感がある

・統一感、一体感がない

 
■プラン提案

インタビューの結果を受けて関係性の見立てを行い、6 回+フォローアップ 1 回の提案をする

 

■第 1 回目【メンバーの古くて新しい出会い】

このシステム(組織・チーム)の強みとして、仕事が好きであること、保育士を目指した理由や仕事に対しての思いがある。
第一回目は全員でその思いを共有するところから始める。 最初は緊張の面持ちだったが、話を進めていくうちに表情が柔らかくなる。
「えー、そんなことを思っていたの?」「同じような思いを持っているのね」などという声が出始める。
今まで知らなかったメンバーの側面を知り始める。「人を見る目が変わった」との感想が出る。

システムコーチングを進めていく上での合意づくりをして第1回目は終了。
まだメンバーにはシステムコーチングは何かというのはつかめていない様子である。
しかし、確実にメンバー同士のつながり感は増している。システムコーチングに対する期待感も上がったようだ。

 

>■第2回目【大量の離職者と新しいビジョン】

2 回目実施直前に大量の離職者が発生する。システムコーチングの参加者(リーダー層)からも半数近くの離職者が出た。理事長より緊急相談があり、システムコーチングそのものの存続をどうするかの話になった。
結果、離職者が出たことにより、影響を受けている残ったリーダーたちの心の声を聴く回とした。
 
このシステムの癖として、人前で話すことが苦手だったり、負の感情を出したりすることに遠慮がある。
最初は口ごもり、なかなか話したがらなかったが、コーチは励ましながらシステム(組織・チーム)をサポート、関わり続ける。
 
私たちは一つのチームとして仕事がしたい少しずつ、どんなに残念に思っているか、どんなに悔しい思いをしているか、せっかくシステムコーチングがスタートしたのになど、怒りや悲しみの感情が出始め、連鎖するように 口々に話し始める。
ひとしきり負の感情を出し切ってもらうと、「自分たちは自分たち」「よい園にしていくのは私たちである」「いつまでも引きずらない」などの言葉が出てきた。
ここで区切りをつけ、今後のビジョンに方向性を変えて話し合ってもらった。
 
「私たちは一つのチームとして仕事がしたい」との声、園のビジョン(望ましい姿)がうかんできた。

 

■第3回目【発見する。仕事の責任の一端は自分にあった】

新メンバーを迎え、今までの経過を共有する時間をとった。
その後、システム(組織・チーム)の関係性を体感するワークを実施。
ワークを通してチームワークやリーダーシップを体験し、自分たちが作っている関係性がどんなものなのか自覚を高めてもらうこととした。
 
ワーク中にメンバーにとって大事なことが起こった。
保育中の子どもに関わることでメンバーにとっては仕事の責任を連想させる衝撃的な出来事であった。
そこから学びを得られる振り返りを丁寧に行う。
 
「一人一人が関係性に対し責任があることが分かった」
「リーダーに引っ張って行ってもらいたいという気持ちがあったが、自分も積極的に関わらなければならないということがわかった」
「今までリーダーシップは強く引っ張っていくものと思っていたが、ほかのスタイルもあることに気づいた」
「自分たちの関係性が仕事に影響することが分かった」 などの声が出、全員が深くうなずく。

 

■第4回目【「私」「あなた」から「私たち」へ】

「園全体で保育をするとはどういうことか」をテーマとして、ワークを開始。
本園、分園、管理の立場を体験するワークを行った。
それまでは、「自分たちが一番大変で苦労している。それをわかってもらっていない」という思いが根底に流れていた。
 
このワークを通して、それぞれの立場を理解することができたようだ。
 
「前は本園にいたのに、その時の気持ちを忘れていた」
「低年齢児のチーム保育の大変さが分かった」
「一人担任って大変だよね」
 
という言葉が出た。  
個々の問題と考えていたものが園全体「自分たち」の問題であると認識ができるようになった。
この回からようやく信頼関係がないと言えない心の内、本音(言いにくいことを言う)が出始めてきた。

 

■第5回目【怖さを乗り越えて一つになる】

怖さを乗り越えて一つになる再び園のビジョンをテーマにワークを実施。
今回はコラージュ作成を取り入れる。
目に見えないビジョン、夢をコラージュで表現していく過程で関係性やシステムの思い込みがうき彫りになる。
 
このシステムの思い込みとは、失敗はしてはいけない、うまくやらなければ認められない、お手本にならなければいけないなどである。
こういった思い込みが制作の手を止める。
失敗OKを提案するなどコーチはシステム(組織・チーム)を励まし、ワークを進める。
 
しかし、個人の制作をチーム全体の制作に広げる段階で再び手が止まる。
誰も手を動かさない沈黙の時間が7分間続く。
 
現れたものは、他人が作成したものを壊す恐怖感、すなわち立ち入ることへの恐れだった。
全員で作り出すまでに越えなければならいものが洔き彫りになった瞬間でもある。
コーチはこの場合、場を見守る存在となる。
そのうち一人が我慢できないという風にとなりの人の作品と自分の作品をつなげ始めた。
堰を切ったように全員が同じようにやり始め、園のビジョンを作り出していった。
 
終了後、制作中の写真を見せると「わぁっ」という歓声が上がる。
 
園が一つになるってこういうことなんですね 「園が一つになるってこういうことなんですね」
と感想が出た。
 
心の葛藤、湧き上がる感情を乗り越えて、一つの作品が出来上がる過程を体験することで、 保育園の大きなビジョンが誕生した。
全員が満足そうな様子である。
 
最後に、このビジョンが実現されるためには何をすることが必要かとコーチから問いかけをした。
リーダーの一人の「会議のやり方を変える」という答えに全員がうなずき、心からの合意があることが見て取れた。

 

■第6回【ベクトルが合う行動を起こす】

最後のシステムコーチング。
会議の結果を聞く。
全員がうきうきとうまくいったことを話し出した。
「聴く」という行為の威力を口々に語る。
 
リーダーたちが率先して話しやすい雰 囲気を作り出すことに成功した。
結果、双方向の会話が生まれ、充実感のある会議になったという報告を聞く。全員が誇らしげな表情をしている。
 
ここでシステムコーチングはいったん終了するので、今後に向けての話し合いを持つ。
リーダーチームがシステムコーチングで経験したのと同じような感覚を園全体で持つためには何をしたらよいのか、という話になった。
具体的行動を話し合ってもらったが、ここまで来ると、コーチは見守る役割をとり、ほとんど会話には介入しない。
最後に感謝を伝え合うワークをやり、さらなる信頼関係を築いて終了となった。
 
この回にはおまけのエピソードがある。
 
保育園の日常は非常に忙しくシステムコーチングもきっちり時間通りに始められることは少ない。
 
しかし、この回はリーダー全員が時間通りに集まり、理事長と園長が所用で遅れるということがあった。
するとリーダーたちが口々に「時間は守らなきゃだめよね、私たちが集まっているのに。用事があるなら先に言ってもらえれば、誰かが代わりにやれたかもしれない」などと言い出した。
実際、園長と理事長が到着した時に、きちんと要望を伝えている。
 
こういった関わりは以前にはなかったものである。
システムコーチング開始前の出来事だったが、すでに文化が変わり始めていることが見て取れ、コーチには嬉しい始まりとなった。

 

■フォローアップセッション【新しい文化が根付く】

最終回から3か月後のフォローアップとして、この3か月に起きたこととシステムコーチング全体の過程を振り返り、未来のビジョンにつながる更なる関係性を構築する回とした。
 
最終回で出た具体案とは、園全体でイベント(ボウリング大会など)をすること。
どうなったかを聞くと、大きなイベントは開催できなかったが、暑気払いの会を持つことができたとのこと。
実はこのシステムは、昨年忘年会がおながれになった経験を持っている。
職員が集まり話をすることに渇望感がありながら、個人の生活(家庭では母であり主婦である人が多い)に立ち入る遠慮から実現できなかったのである。
ここから見ると大きな進歩だとシステムは満足そうである。
 
そして、会議は更なる進歩を遂げていた。
事前に議題になることを全員がノートに記入し、司会は当番で持ち回り、理事長、園長からの伝達会議は意味がないという声が上がり、自主運営会議がしっかりと根付いていた。
 
そこで、現時点での園と個人の関係性を見るワークを実施。
園をぐっと身近に第二のホー ムのように感じている人、もっと育てたいと育む意欲を見せた人、個人の生活との両立を挙げた人、それを全体から見守る人などが現れた。
システムコーチング当初の感覚と比べてもらい、これを実現させてきたのは、このシステムの強みであることを伝える。
 
メンバー全員の感想として、システムコーチングの一番の効用は、今まで横のつながり (職員間の人間関係)に行きがちだった目をまっすぐに園児に向けることができるようになったことだというもの。
人間関係に使っていた余分なエネルギーを純粋に仕事に使えるようになったということだ。
 
最後に今後の課題出しを行う。
真っ先に挙がったのは、リーダーたちが実現できた関係性を園全体に広げること。
自分たちはシステムコーチングによってより良い関係性を生むことができたが、今度は自分たちがこの関係性を園全体に広げていく番だと意見が出る。
 
さらに、システムコーチング導入前の懸案であったマニュアル作りにも話題が及び、自分たちには最善に必要なことであると作成に向けての意欲がまとまってきた。
 
引き続き自主運営会議で案を練ることとなって、フォローアップセッションは終了した。


 
 
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