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Part13 リーダーシップの源泉
リーダーシップの源泉
組織力を向上させるにはリーダーのあり方が深く関わってきます。
ある組織開発の場面で社長と社員間での根本的な関係性に言及することが起こりました。
社員の社長に対する不満が一気に吹き出したのです。これはいい傾向です。
今まで言いたくても言えなかったことが言葉として現れ出したということです。
こういう場合、この流れを抑えることはしません。
全て吐ききってもらうのが鉄則です。
ただし、攻撃とも言える場面ですから、安全性をしっかり確保した上で行います。
そのため、社長には少し輪から離れた場所で後ろ向きに社員の話を聞いてもらい、社員には噂話のように不満を話してもらうようお願いします。
社員からは雪崩のように今までの社長の行動、態度に対する不満が出てきました。
痛烈な批判にも聞こえます。
時折、社長はなにかしら言い訳をしたい素振りを見せますが、ここは我慢してもらいます。
社員が訴えたかったのは、社長の行動や態度から自分たちがどんなに不安になっているのか、どんなに大事にされていない感じを持っているのか、どんなに自分たちが道を失っている感じがしているかでした。
ここで大切なのは、社長にとってそれが真実かどうかはあまり重要でないということです。
自らの行動、態度から社員が何を感じ取り、どんな影響を与えているのかを知るのが重要なのです。
そして、さらに重要なのは、社長自身それをどう受け止めるかです。
さて、こういった場合、反応は2 種類に別れます。
一つは反応的に自分を防御したくなり、言い訳と説明に終始する。
もう一つは否定的ともとれる発言を組織の声として受け取り、成長のための糧として自分を変える材料にしていくことです。
この2 種類の態度をそれぞれ、リアクティブ(反応的態度)、クリエィティブ(創造的態度)と呼びます。
これは人間の成長段階でもあります。ある研究では、リアクティブ段階にいる成人は全体の70~80%に及び、「恐れ」から出る行動と言われます。
つまり、「○○しなければ何か悪いことが起こる」という思い込みから発する行動です。
先の例で言えば、「言い訳しなければ自分の立場が無くなり社員の信用を落とす」といったところでしょうか。
では、このリアクティブな行動を起こしたならば本当に社員の信頼信用を落とさないのでしょうか。
結果は明白です。
言い訳すればするほど、社員は社長に懐疑心を持ち、さらに信用を失います。
では、クリエィティブな態度とはどんな態度でしょうか。
一言で言うと「愛」から出る行動、態度です。
先の例で言えば、社員の不満を真実かどうかにはかかわらず受け入れ自分を改めようと態度のことです。
クリエィティブな態度は優れた業績につながるリーダーシップのコンピテンシー(行動様式)とも呼ばれます。
組織を成長させるリーダーシップの指針と言って良いでしょう。
大別すると5 分類され、細かくは18 個に分類されます。ここでは名称のみ紹介します。(※注)
【※注 分類はザ・リーダーシップ・サークル(リーダーのための360度フィードバック)によります。】
②自己認識(無私・ワークライフバランス・落ち着き・自ら学ぶ)
③本質(一貫性・勇気ある本質)
④全体認識(社会・世界への配慮・持続可能な生産性・システム思考)
⑤目標達成(戦略思考・目的とビジョン・結果を出す・決断力)
さて、件の社長はどうだったでしょうか。
少し表情はひきつりながらも、まずは、今までの自分の態度や行動で相手を傷つけていたことに対して謝りました。
そして、組織のビジョン、目標に向かうためにはこう改めると宣言しました。
その結果、社員には笑顔が戻り、その後本当に話されなければならない議題、すなわち業務改善の話にスムーズに移行することができたのです。