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Part15 リーダーシップと「社会的知能」

社会的知性(SQ)とは

EQ という概念が日本に入って久しくなり、最近では当たり前に知っている方が多くなりました。
EQ(=Emotional Intelligence)とは「こころの知能指数」と訳され、

①自分自身の情動を知る
②感情を制御する
③自分を動機づける
④他人の感情を認識する
⑤人間関係をうまく処理する

の5 つの領域で説明されています。

EQ が高いとは、感情をコントロールでき、自分自身を動機付けて挫折しても頑張ることができる、また、感情が乱れるようなことがあっても思考力を維持できる、また、他人に共感でき、人間関係を維持できるような能力のことをいいます。
さらに最近では、⑤人間関係をうまく処理する能力はSQ(=Social Intelligence)「社会的知性」としてひとつの分野を確立しています。

「社会的知性」とは人と人とが個人の枠を超えて相互に作用し合う場合にどんなことが起こるかを理解することができ、自他ともに利益を得るにはどうすればいいかを考えることができる能力だともいいます。

「DJポリス」

ワールドカップ1次リーグで日本が敗退したのは、残念ながらも記憶に新しいところですが、昨年W杯出場を決めた試合のあとの「DJポリス」の活躍を覚えておられる方も多いでしょう。

「こんな良き日に怒りたくはありません。私たちはチームメートです。どうか皆さん、チームメートの言うことを聞いてください」
「皆さんは12 番目の選手。日本代表のようなチームワークでゆっくり進んでください。けがをしては、W 杯出場も後味の悪いものになってしまいます」
「怖い顔をしたお巡りさん、皆さんが憎くてやっているわけではありません。心ではW 杯出場を喜んでいるんです」
「声援もうれしいですが、皆さんが歩道に上がってくれる方がうれしいです」

この呼び掛けのおかげで、渋谷駅前でこの日は1人の逮捕者やけが人もなく、大きなトラブルも起きなかったといいます。
筆者はこの呼びかけこそが「SQ=社会的知性」のなせる技と考えています。

感情、気分は伝染する

最近の脳の研究はめざましく、EQ、SQ も社会神経科学と呼ばれる分野の研究理論で裏付けされています。
それによると、(というより私たちは経験的に知っていることですが)平静さ、陽気さ、気楽さ、あるいは焦燥感、怒り、悲観などの情動は伝染しあうとのことです。
私たちは人と出会うたび、情動という信号を送り出し、互いの気分に影響を与え合い、さらに周囲の人に伝染させるということを行っているのです。

スポーツ観戦の高揚感、卒業式の涙など、自分ではそれほどでもないのに周りの空気につられいつの間にか声をあげたり、一緒に泣いてしまった経験のある人は多いのではないでしょうか?

ビジネスマンに身近なところを言えば、会議でのとけとげしさ、行き詰まり感のひろがりも同様のものだと言えます。

感情は誰にも気づかれることなく人から人へと伝わります。
なぜなら、感情に関わる伝達は、リスクを回避する必要から感度がよく、無意識下で自動的に働く超高速回路がつかさどっているため、理性判断を行う回路よりも先に伝わってしまうからです。

共感と同調

相手との交流がうまくいったと感じられるには気分が同調出来たかどうかで決まると言われています。

DJポリスは、ややもすると逸脱しかねない民衆に力で訴えるのではなく、その気持ちに共感し、仲間としての立場から話しかけ、平静な気持ちで、何をして欲しいのか正確に伝えました。
それによって民衆はいい気分を残したまま、平静さを取り戻し、秩序が保たれたのです。
これは日常でも大いに使いたい知能です。

社会的知性もEQ 同様開発できるものです。
複数の人間が作る場の空気感をも変えていけるこの知性はこれからのリーダーには欠かせないものでしょう。

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