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Part24 一人ひとりが影響している
関係性とはなかなか見えにくく、推測されることが多いものです。
組織開発の現場では、関係性が仕事にどんなふうに影響しているのかワークを通して見える化します。
T社では、パートを含め退職者が続出するという時期がありました。
社長始め、残る社員には現実の仕事にも大きな影響が出ましたし、心理的にも大いにモチベーションが下がる出来事でした。
関係性の見える化
行ったワークは関係性を糸で表現していくというものです。
メンバーが一本ずつ持った糸を絡めながら自分たちの関係性を表現していきます。
その絡めた糸の上にあるものを置き、所定の位置まで運んでもらうという簡単なワークですが、絡み具合によっては乗せたものが簡単に落ちますし、運ぶあいだに障害物があれば簡単に糸はたわんでしまいます。
これを二巡しますが、さらに二巡目には半数の人に糸を離してもらいます。
当然、ものは落ちてしまいますが、もう一度糸を絡め直して再びコースを回ります。
この時の心理、行動が学びにつながって行きます。
糸を離した人は辞めていく人、糸は関係性、乗せたものは仕事を表し、糸、乗せたものの状態の変化(糸がたわむ、ものが落ちるなど)が関係性、仕事への影響を表しています。
T社で行ったワークでは、人数が減った途端、コミュニケーションが活発になりました。
張っている糸が少なくなった分、均等に力を配分する必要ができ、それぞれの状態を伝え合うようになりました。
また後ろ向きに歩いている人に対しては、障害物があるときには注意を促したりと、一巡目にはなかった行動が見られるようになりました。
ワークの振り返りは、感想、学び、実践の行動が引き出されるように問いかけをしていきます。
最初に出た言葉は、
「少なくなってもなんだかやれる、と思えるようになった」「充実していた」「糸が少なくなった時にはどうしようかと思った」「不安だった」というもの。
その中にこんな感想がありました。
「今まで、とてもリーダーを求めていたし、リーダー格の人がリーダーシップを発揮してくれないことに対してとても不満を持っていました。
でも、これをやってみて、自分がチームの一員で糸を持つ責任があるんだということを実感しました」
組織開発の事前インタビューでは、この不満がとても多く聞かれていました。
リーダーの指示命令は多いのに適切でなく、メンバーが不満を募らせていたのです。
自分は役職にはついていないし、何もしていないから影響はないだろう。
そんな風に考える人は多いものです。
しかし、それだけにチームの士気や関係性に自分の消極的な態度が影響を与えていると知ったときの驚きは大きいのです。
それも人から言われるのでなく、自身の体感として感じた時ほど忘れられない経験となります。
感想や学びが出尽くすと、これからどうしたらいいのだろうかという実践面の話に移行するタイミングがやってきます。
ここから先は私は場を見守る役割となり、介入を減らしていきます。
組織には自己再生能力も自己編成能力も備わっています。
それを信じられないと、口出ししたくなるのです。
ここが実は我々の試される場面です。
言ってみれば、リーダー(上司)という人たちも、フォロワー(部下)が自主性と能力を持っている存在と信じて関わる力が必要ということです。
不思議なもので、そう関わるとメンバー一人ひとりが役割を自覚し、自主性と責任を持ったチームに育っていくのです。