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Part4 不満の背後の夢
最近は愛煙家は肩身が狭いようですが、社員の本音を聞きたかったら喫煙室や給湯室、とよく聞きます。
ちょっとしたグチや不満、本音などがポロっと出てくる場がそこにあります。
もちろん、グチや不満がいいと肩を持つわけではありません。
しかし、グチや不満には、組織を変えていくヒントが含まれています。
なぜならそもそもの夢や期待が敗れて不満に形を変えていることが多いからです。
パーソナルにコーチングをしているマネジャーのTさん。
コーチングが始まると組織のメンバーへの不満、失望感から話が始まりました。
マネジャーとしての力量を期待されてヘッドハンティングされたものの、想像以上に内部組織が硬直化しており、思うように仕事が進まないことへの苛立ちです。
この苛立ちはいったいどこから来るのでしょうか。
3 つの現実
コーチングをするうえでは、私たちが普段「現実」として意識しているものを、3つに分けています。
まず一つ目が「合意された現実」。
英語ではコンセンサス・リアリティーといいます。
つまり、パソコンはパソコン、携帯電話は携帯電話と、みんながこれはそうだという合意のもとでこれが現実だとしているものです。
例えば、10 年前にタイムスリップして、その時代の人にiPad を見せたとしてもひと目では何が何だかわからないでしょう?
合意形成がなければ理解できないのです。
目に見えるデータ、数字、日々の出来事などがここに含まれます。
二つ目が「ドリーミング・レベルの現実」です。
この現実では、様々な感情、希望、期待、失望、不安、恐怖、などが含まれます。
新入社員の夢や希望が3年後にどう変わっているでしょうか。
「これが現実だ」なんて先輩の口から出そうですね。
三つ目が「センシェント・エッセンス・レベルの現実」といいます。
これは可能性の源、ひらめきなど、言葉で言い表せない部分です。
わかりやすいたとえで言えば、「一目惚れ」がこれに当たります。
ビビっときた瞬間、ドリーミングに飛び移り、恋に対する不安や期待がもくもくと湧き出します。
この3つを図で表すと次のようになります。
もう一度夢とつながる
Tさんにもう一度戻りたいと思います。結果的にTさんはどうなったかというと、もう一度前向きになり、新たに具体的な行動案を出し、実行することを約束してくれました。
私とTさんの会話で何が起こっていたのか、3つの現実を踏まえながら解説します。
私はTさんに共感しながら話を聞いていきます。
うまくいかなかった事実(合意された現実)を聞き、そこにある苛立ち、不満、失望感、やるせなさなどなどの感情(ドリーミング)に耳を傾けます。
負のドリーミングが語り尽くされたとき、少し間を置いて、Tさんは、なぜ自分がヘッドハンティングされたのかを思い出していました(エッセンス・レベル)。
そして、そもそもの自分のドリーミング=この組織でどんな仕事をしたかったのか、どんな力を発揮したかったのか、Tさん自身の口から語られ始めたのです。
Tさんが本来の自分の夢、力を取り戻した瞬間です。
そして、もう一度何をすべきかについて(行動レベル=合意された現実)について語ることが出来るようになったのです。
打ちひしがれた(裏切られた)夢に対しては、この3つの現実を全部聴くことで、もう一度本来の夢につながることができるのです。
今回は個人の例をお話しましたが、実はチーム、組織でも同じです。
組織に不満が充満しているとき、その不満の背後には裏切られた夢が存在します。
喫煙室や給湯室で不満が語られていたら、その背後にある夢に耳を傾けて見てください。
組織やチームにとっての宝物がきっとあるはずです。