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ニッポンメンテナンスシステム株式会社 代表取締役 伊藤光治さん

ニッポンメンテナンスシステム株式会社
代表取締役 伊藤光治(いとう こうじ)同友会会員

 
実はこのインタビューは2010年2月にさせていただいたものです。
今回はそのエッセンスをぎゅっと詰まったものにいたしました。
経営の危機を持ち前の底力と機転で乗り切った経験をお持ちの伊藤さん。
伊藤さんのパワーとお人柄が伝わると嬉しいです。
そして、伊藤さんと言えば、玄人肌の写真。もちろん最近の写真も頂いています。

遺書を書いたらスッキリした! ~持ち前の底力で乗り切ったバブル崩壊~
KAO:
伊藤さん、よろしくお願いします。
早速ですが、創業 25 年(2010 年当時)とお聞きしています。会社経営にはいろいろおありだと思うのですが、これはというエピソードをお聞かせください。


伊藤:
創業は1985年で、5年間は非常によかったんです。
会社経営ってこんなに簡単なものなのかって・・・(笑)
創業は築地のマンションの一室で始めたのですが、東京と千葉、さらに神奈川、埼玉、仙台・・一気に事業所を増やしていったんです。人員も一営業所に3名くらい。なんだかんだと 20 人くらい増やしてピーク時 32、3名くらいまで行ったんですかね。創業6年目くらいの時のことです。


KAO:
順調でしたね。


伊藤:
ところがね、ところがどうもおかしいぞ、と。車の売れ行きがおかしい。ちょうど世間でバブルの崩壊というのがうわさされ始めたころです。これバブルの影響かなと。急に人を入れて事業所を作ったものだから固定費は増え、そのころから赤字になっていったんですよ。
赤字だけだったら何とかまだ対応できるんですが、銀行の貸し渋り、貸しはがしがありましたからね。
当社の場合、お金が先に出て行くビジネスモデルなんですよ。リース会社ではメンテナンスを修理工場に依頼しますから修理代の支払いは先にしなければなりません。回収は後の月々回収になるんですね。
お金だけがどんどん出て行く。さらに銀行の貸し渋り、貸しはがし。資金が続かなくなったんですね。
恒常的な赤字が毎月。それが 9 年続きました。会社としてはいつも 3、4000 万円が足りない状態で回転させていたことになりますね。
 
そのとき初めて川面が近くなったのを覚えてますね。


KAO:
川面が近くなった?


伊藤:
うん。飛び込んだら楽かなって(笑)
でもね、冗談ではなく、仕事もやる気もなくなって、社員には言えませんが、日比谷公園の休憩所で遺書を書いたんですよ。


KAO:
遺書・・・


伊藤:
でね、僕ねそれで初めてわかったんですよ。遺書を書くと気がすっきりするんです。
死ぬわけじゃないんです。書くことで、そこにぼーんと気持ちを出せる。それで気が楽になる、そんなことを経験しましたね。で、それからですね、方向が変わってきたのは。


KAO:
といいますと?


伊藤:
そのころ、知り合いのある会社の役員からゴルフのお誘いがありましてね。でも、お金も暇もないしね。あまり気乗りはしなかったのですが、それでも誘われたんだから行かなきゃいかんだろうと思って茨城のほうへ行ったんです。
その当時、ちょうどねー僕はレンタカービジネスというのをプランニングしてましてね。で、そのときに昼食の時に何か面白いアイデアないかなーという話になって、「こういうレンタカーのビジネス考えているんですけど」といったら、その役員の方がですね、「伊藤さん、それ面白い、うち乗るわ。どのくらい金かかんの?」ということで。意外な展開になったんですよ。


伊藤:
その方のおかげでリースの枠が取れることになりまして、実現できることになったんです。
ところが中古車を整えるためには現金が必要でそれがないわけです。リースですから先に立て替えなければならないんですよ。そのときに経営革新に出会ったんです。


KAO:
東京都の中小企業支援策ですね。
(経営革新についてはこちらをご覧ください)
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/keiei/kakushin/1gaiyo.htm


伊藤:
そう。夢遊病者のように都庁のほうへ情報集めに出かけて、経営革新というのがあると知ったんですよ。これだと思いましたね。ところが、レンタカーで申請しようとしたところ、うちの経理の役員にもうレンタカーはあると反対されましてね。それでも、やってみなきゃわからんだろうということでレンタカービジネスにアレンジして申請しました。それでね、通ったんです。


伊藤:
4000万の無担保で資金調達ができて。そのころ安定化資金として 5000 万が無条件で借りられる制度もあったので、それで約 9000万の資金が集まりました。そのうちの恒常的に不足している資金も安定化資金で賄って、残りをレンタカー投資にもっていったんですね。


KAO:
ほっとされたでしょうね。その時の伊藤さんの心中には想像しがたいものがありますね。
伊藤さんの何が一体それを乗り越えさせたのでしょうか。


伊藤:
そのときですね、自分の中のパワーってものに気づいたんですよ。気の強いところが出たというのでしょうか。自分というものの力はこんなもんじゃねえんだ、俺ってもっと力がある、というような。


KAO:
ほう~、危機に陥ったとたん力がムクムクと起き上がってくる感じですね。
どんなところから気づかれたんですか


伊藤:
前職(ニッポンレンタカー)の会社での経験ですね。(今とは)規模、レベルは違うにしてもリース部門では全国 No.1 にしましたしね、営業的にはそれなりの実績を上げたという経験があるんです。ですから、たとえ売り上げがこのくらいのレベルでつぶれるようなオレじゃない。こういう気持ちが出てきましてね、それが乗り越える底力となったように思います。
とは言ってもね、実は、(精神的に)とても落ちやすくてすごく弱いんですよ。だけど、あるところまでくると、ぐわーと力が出るんですわ。落ちるところまで落ちるけれど、どうしてもそれ以上落ちられない一線があるという感じなんですよ。


KAO:
伊藤さんの強みですねー。


私の営業の原点はここです。 ~高二の夏休み東北一周自転車 東北一周自転車 東北一周自転車ひとり旅~
KAO:
伊藤さんは昔からそんなところがあったのですか?
その底力の原点というようなものはありますか?


伊藤:
高校二年の夏休みですかね。仲間4名で一緒に西日本へサイクリング旅行という話が起きまして、それぞれ準備に入ったのですが、メンバーが一人抜け二人抜け、最後に残ったのは僕だけだったんです。でも、一人で行ってみるかと思い、西日本はやめて甲信越から東北六県のほうにいってみることにしたんです。味噌、しょうゆ、テント、米等を当時は三段ギアの自転車に積んでね。チャレンジしてみたかったんですね。


KAO:
すごいチャレンジだと思うのですが。


伊藤:
そのときもワクワクのほうが強かったですね。実際走り始めてから大変だと気づいたんです。(笑)


KAO:
やってみて初めて大変だと。


伊藤:
それがね、その自転車旅行が僕の営業の原点なんですよ。
まず2日間はテントを張ったのですが、2日目で大雨と雷に打たれまして、テントが重くなったりしてもうイヤだと。それから民家に泊めてもらおうとひらめいて、ドアツードアを始めたんです。


KAO:
わー、知らないお宅に飛び込みですよね?何件目くらいで泊めてくれるんですか?


伊藤:
3件、4件で決まるときもあるし、20 件以上やってもダメなときがあって、そういう時は学校に行くか道沿いのお堂に泊まるんです。学校には宿直の先生がいたので、カツ丼をご馳走になりましてね(笑)岩手県の学校でしたね。やっぱり岩手県でしたが、泊めてもらえなくて道沿いのお堂に寝袋で泊まって、裏がお墓だったんでちょっと気持ち悪い思いをしたこともありますね。夏ですから(笑)あとは大体民家に泊めてもらいましたね。


KAO:
ひゃ~、確立の高い営業ですね(笑)。民家の方ってどういう反応をされるのですか。
見知らぬ高校生が玄関に尋ねるんでしょう?


伊藤:
何を言って泊めてもらったのかは忘れましたけど、警戒心はたぶんあったとは思いますよ、当時学生運動のちょうど大学紛争の終わるころで安田講堂の事件があったりしましたからね。でもね、泊めていただいたところは本当に親切にしていただいてね、夕食も朝食もご馳走してくれますし、昼はおにぎりを作ってくれるんですよ。ほとんどお金を使いませんでした(笑)
洗濯物も洗ってあげますよと言われることが結構あって。女の子がいる家だったりすると恥ずかしかったりするんですが、しっかり洗ってもらっていました(笑)


KAO:
なかなか出来ないことだと思うんですよ。


伊藤:
あんまり考えていないんですよ。


KAO:
そこにハードルがない感じ。


伊藤:
そのときはなかったかもしれませんね。ただ、研修でも飛び込み営業をしましたがあれはイヤでしたね。何のためにこんなのやるのと。今考えるとあれがあったから根性がついたかなと思いますが。


KAO:
伊藤さんは考えて行動するというより、身体が先に出ちゃうタイプなんですね。


伊藤:
そうですね。身体が先に行きますね。せっかちだし。
動いた結果失敗したというケースもたくさんありますよ。


KAO:
またそのお話を聞かせてください。
今日はありがとうございました。


最近の伊藤さん
KAO:
最初にインタビューさせていただいてから2年も経っていますね。最近はいかがでしょうか?


伊藤:
仕事ではね、新商品開拓をしていますよ。この一年情報収集に費やしました。
「タイヤの保管サービス」「中古保証商品のリニューアル」「JRC(ジャパンレンタカークラブ)の設立」「自販機と結びつけた電気自動車の蓄電機の無料設置」「旅行会社との提携」「整備工場向けメンテナンスパックと保証を絡めた商品」「電気スクーターの販売」これが新商品ラインナップ。


KAO:
わあ、すごいラインナップ!相変わらずアイデアマンでエネルギッシュですね。この一年同友会でもあまりお顔を拝見しなくなっていたのでお忙しいんだろうなとは思っていました。


伊藤:
そうそう。「カーサービスを無限に広げる」をミッションに活動していますからね。これをCSIと呼んでいるんですよ。


KAO:
C・S・I?


伊藤:
CAR Social Infinity の略ですよ。


KAO:
カッコイイですね~。お仕事が無限大に広がる可能性を感じますね。


KAO:
プライベートではいかがですか?伊藤さんと言えば写真ですね。最近はどんな写真を撮られてますか?


伊藤:
最近はねえ、「楽しんで撮る」がテーマなんですよ。風景を撮っています。特に廃屋と廃校に惹かれていましてね。高齢化と少子化という世相を表現できるなあと思って。
社会性を盛り込めますから。

紹介する組写真は、ある集合住宅なんですが、このボロボロの住宅に2世帯住んでいるんですよ。本当に驚いてね~。


KAO:
写真は言葉よりインパクトありますね。ご覧になる方もいろんなことを感じるのではないかと思います。

どうぞこれからもお仕事に趣味にご活躍ください。
またお聞きしたいと思います。どうもありがとうございました。


伊藤さんの組写真です。お楽しみください!

インタビュー所感
2年前のインタビューを読み返してみましたが、伊藤さんのお話は面白いですね。人とは違う機転の良さとか、愛嬌の良さとか、お人柄がにじみ出ていると思います。最近の伊藤さんもとてもエネルギッシュに活動されていました。写真も腕を上げられているのではないでしょうか。
7枚の組写真から何かを訴えかけられているように感じるのは私だけではないと思います。
またいつかお話を伺える機会があったらいいなと思いました。

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