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建築診断協会 代表 鷲尾建志さん~その1~

鷲尾建志さん会社所在地:東京都目黒区下目黒1-3-4ベルグリーン目黒102
TEL 03-5719-7181
ホームページ:http://www.kenchikushindan.com/
◆プロフィール◆
昭和 32 年 2 月 12 日 東京都目黒区生まれ
昭和 54 年 3 月 31 日 慶應義塾大学 経済学部卒業
昭和 54 年 4 月 1 日 ㈱三恵工務店 建築部入社
以来 30 余年 建築総合請負会社にて現場管理
積算業務、不動産計画に携わる。
平成 16 年 2 月 1日 建築診断協会設立
業務 ・建物診断 ・見積診断 ・マンション・ビル修繕サポート ・発注コーディネートなど
現在に至る
■資格:特殊建築物調査資格者
RCマンション健康診断技術者
■所属:目黒三田会、目黒区異業種交流会メネビスクラブ
東京青年会議所目黒区委員会OB会、不動産三田会
目黒区行財政改革諮問委員会 元委員
東京共済病院諮問委員会 元委員

建築診断士とは・・・鷲尾さんの場合


KAO:
鷲尾さんのこれまでの経歴を教えてください。


鷲尾:
もともとはゼネコンの経営者なんです。父の後を継いだのですが、私が入る前から累積赤字がありまして、私の代で会社を閉めました。
その後紆余曲折しまして、今は建築診断士として仕事をしています。


KAO:
その時期は大変だったことと思います。
その辺はまた後ほどお聞きするとして、まずは、耳慣れない(笑)建築診断士というお仕事についてお聞きしたいです。


鷲尾:
(笑)建築やってる人間でこういうのを専門でやっているのは数は少ないと思いますね。
文字通り建築に絡むいろいろな診断をするわけですが、たとえば、マンションを買おうと思っているんだけど、この建物大丈夫だろうかとか、土地を買おうと思っているんだけど買うに値するだろうかとの建築の不安や疑問の相談に乗っています。あるいはマンションの改修工事などで、建設業者とは違う第三者の目で建物を診断して、必要な改修工事のリストをあげたりするんですよ。


KAO:
そうすると鷲尾さんのお客様というのは、業者さんではないわけですね。


鷲尾:
そうそう。ビルなどの不動産をお持ちの方やこれから持つ個人や法人の方、後はマンションの管理組合さんなど。
私の場合、診断するだけではなくて、業者さんとの交渉もするんです。


KAO:
ほう~、といいますと。


鷲尾:
マンションの例を挙げますね。マンションの場合は避けられない三つの潜在的な問題点があるんです。
まず分譲マンションというのは基本的に予算と工期がないんです。それに加えて目の前に施主がいない。
これはどんな一流会社がゼネコンで入ったとしても、この 3 つの状況はついて回りますね。
皆さんにも名前がよく知られているようなデベロッパーだったとしてもです。
厳しい予算、厳しい工期、施主の不在。
ですから、一定以上のレベルはあるにしろ完璧な建物にはならないんですよ。
本当はこれだけの日本の一流企業が組んでいれば完璧なものができるはずなのですが。
みなさんはスーパーゼネコンや○○商社など有名な名前があったら安心するでしょう?


KAO:
はい。安心して買っちゃいます(笑)


鷲尾:
だけど違うわけ(笑)それはね、仕事に入ってみて建物診断していくとよくわかるんですよ。マンションだと共用部の雨漏れや外壁の亀裂などの保証期間は引き渡してから2年。だから管理組合も1年点検より2年目のときのほうが真剣になります。
そこでプロの目を入れようということで呼ばれるわけ。


KAO:
プロの目で見るとどんなことが分かるのでしょうか。


鷲尾:
問題点って問題を起こした人が責任を負わなければならないですよね。ところがその問題の原因って建築の場合はっきりしないんですね。
マンションは工場だけでなく現場で生産するものでね。
その日の天候にも影響されるものなんです。たとえばクラック=ヒビですが、白華現象といって、そこから白い粉みたいなものが噴出したりする場合があるんです。これはクラックから中に水が入って流出したコンクリートの成分が大気の炭酸ガスと化合してできる炭酸カルシウムで、漏水してるという信号なんですよ。
これを放っておくと鉄筋まで雨水がいき、その鉄筋はさびるともとの 2.5 倍の体積に膨れ上がりコンクリートを押し上げるということなんですよ。原因はコンクリートを打つ日に雨だったとか、コンクリート自体の強度が低いとか、鉄筋が本当は入っていなければならないところに入っていなかったとか。
要はそういう現象が出たときにいくつか原因が考えられることで、原因を特定できないところに問題があるんですね。
業者と交渉するときに原因を究明できないから普通の人は嫌がりますよね。
だってクラックを外から見ただけではその原因なんて分かりませんから。


鷲尾:
私の仕事は、そこを調べ上げて追及していくわけですよ。
相手が施工や設計上のミスだと認めない限り有償になってしまいますから、こんな原因があるんじゃないかって想像しながら徹底的に調べあげていくんです。つまり、無償の工事を勝ち取るべく業者と戦っていくんです。


KAO:
戦う?


戦う建築診断士は実は交渉士ですね(笑)


鷲尾:
これは軽井沢のリゾートマンションの例だけれど、8 ヶ月交渉して 2 億円くらいの改修工事を無償でやってもらいました。
鉄筋が入っていないとか、防水上の問題とか 20 項目くらい上げて、直してくれと。
最初は業者に相手にしてもらえなくてね。
向こうは一級建築士やトラブル専門の人を 15 人くらい揃えてくるですよ。
私の側は私と私を紹介してくれた一級建築士の 2 人だけ。
人数から見たらとても勝ち目はない。


KAO:
怖いですね。


鷲尾:
それでもね、しっかり理論武装していると負けないんですよ。材料ひとつとっても、建築材料メーカーに(相手には)内緒でコンタクトして、その材料についてどういうものなのか、こういう場合に使っていいものなの?こういう場合には悪いよねと、全部ウラをとってね、疑問を相手にぶつけていくんですよ。
お風呂でこの材料使うのはおかしいでしょ。
水漏れの原因はこれなんじゃないのって。


KAO:
相手というのは、ゼネコン、デベロッパー、設計事務所ですね。


鷲尾:
その時点ではまだ責任がはっきりしない、デベロッパーなんかだと、販売しただけだと言って逃げられることもある。
でね、追求していくんですよ。
「販売価格に対して、もともと予算が少なすぎるんじゃないの?予算が少ないから材料のランク下げろって言ったそうだよね。
そんな風に言われたら業者はこんな工事しかできなくなるでしょう」と言うと、デベロッパーも自分も悪いという話になるでしょう。
そしてね、議事録も出しなさいって言ってね。
丹念に見ていくんですよ。
そうするといろんなことが分かる。
「毎週工程会議や打ち合わせ会議をやってるようだけど、きちんとしたコンクリー
トを打て、とか誰も発言してないね。
遅れた工期どうするのっていう話ばっかりじゃない。
だから今、クラックが出てるんだよ。
原因はこれだね」と言うと相手は「分かりました、ごめんなさい」となる。
それからじゃあどういう風に直そうかという話し合いになるわけですよ。
で、向こうさんが出してくる直し案にも、「こんなんじゃダメでしょ、クラック入った原因ってもと
もとこういうことなんだから、そこから直しなさいよ」って口を出していく。


KAO:
対処治療でごまかされないで、根本治療を要求するわけですね。


鷲尾:
そうそう。そこに行き着く。
だからね、大規模改修工事並みになるんですよ。
鉄筋入れられるところには、壊して入れてもらうし、できないときは補強のシートを貼ってもらい、仕上げに差が出るので
それを解消するためにその面は全部塗りなおしてもらう、そうすると足場から組まなくちゃならないからね。
金額も大規模改修工事並み。
それが業者さんたちの間でどういう費用按分になったかは分からないけれど、デベロッパーも出して
いるはずだし、まあ、この軽井沢の場合はゼネコンが一番多く負担していると思いますがね。


KAO:
へえ、それを全部無償でやってもらうように交渉するのが鷲尾さんのお仕事なんだ。
管理組合では、なかなかそこまでできないんですね。
おかしいと思っても追求できない。


鷲尾:
そうそう。診断だけだったら全然気がラクですけど。


KAO:
ああ、戦うわけですものね。


鷲尾:
戦うといえばね、この仕事を始めたころ、京都のマンションの管理組合に呼ばれたことがあってね。
それはホームページからのお客さんでね。
最初は関西には私みたいな商売はないんだと思って、なんで東京の診断者に連絡したのかって聞いてみたんですよ。
そしたら、関西で私のような仕事をしている人には全部断られたからだって言われた。
そうそう、向こうにはちゃんと(自分のような仕事が)あったわけ。
で、関西のそういう人に全部断られたと聞いて、あ、ヤバって思いましたよ(笑)


KAO:
戦う診断士鷲尾さんでもビビるんだ(笑)それだけ相手が手ごわそうだった。


鷲尾:
だからね、最初から交渉の見積金額なんて出せなくて、まずは建築の診断だけさせてください、それで応援できそうだったらそのときに言いますって言ってね。
でも、一生懸命見てるとね、これおかしいじゃん、これもおかしいじゃん、図面でもこうなってるじゃん・・あれもこれも、って出て来るん
ですよ。
それで、これだけ脇が甘い業者ならやれそうかなって、引き受けた。
でもね、向こうの業者さんとどのくらい交渉すればいいか見当がつかないわけですよ。
だから、(交渉が)長引いたら申し訳ないけど金額を 1 回ごとの単価だけ決めて毎回京都まで行きました。
一年近く交渉はかかったけれど、結局 20 項目くらいあったのをほとんど直してもらいましたよ。


KAO:
ほ~、やっぱり戦う診断士だ(笑)


鷲尾:
そういう時ね、必ず途中で弁護士雇ったほうがいいんじゃないかという話になるんです。
お金が絡んでくるからね。
裁判やったほうがいいって考えるのね。
でもそれってね、相手を開き直らせるだけなんですよ。
私は実利を取ったほうが住人のためにはいいと思っていますから、裁判沙汰にはしないほうがいいと忠告するんです。
たとえば鉄筋の強度にしても、裁判に持ち込んだとしたら相手は開き直る可能性が高い。
もう一度構造計算なんてことになると、第三者(鷲尾さん)に言われて鉄筋が多少少ないのは分かりますが、別に建物は崩壊のリスクはありません。
だから過度の要求は認められません、なんて判決になるんですね。
そうなると、戦ったという事実への自己満足はあるけれど実利がとれないんです。


鷲尾:
それに裁判まで行かなかったとしても弁護士さんを入れるとなると、結局は弁護士さんが私のような建築のプロを連れてくることになるから、その分弁護士費用が無駄に増えるだけでしょう。
だから実利を取りましょうと。


KAO:
ふーん。診断士というより交渉士と呼んだほうがいいかもしれませんね。


鷲尾:
だからね、マンションやビルの改修コンペも私が設定しますよ。
管理会社に見積もりを頼むと全部お手盛りですから。
それって発注が公明正大でないわけです。
私は(ゼネコン時代に)見積もやっていましたから図面を見ると大体予算が作れちゃう。
それで、こと細かに各部位ごとにこういう内容で直すという仕様と図面を作成して、管理組合で何社か見積参加の業者を推薦してくださいと言う。
すると何社か上がってきますね。
各社に見積してもらって金額の説明をしてもらい、提出してもらう。
ただし、各社の名前はA社、B社、C社というように伏せてね。
なぜなら、やはりそれぞれ理事長や、副理事長などが自分の推薦した会社を押そうとするから。
会社チェックは公正に行ってもらうために名前を伏せるんです。
私はその会社がどんな工事をしているのかを調べて通信簿を作ってあげるんですよ。
そうすると、会社の経歴書ではこうなっているけど、実際にはこういう工事が多くて、やっている人間はこんな人間です、なんてことまで。そうするといろいろ見えてきて、A社は安いけど危険だよね、B社のほうがこういう形で経営しているから安心だねとか、意見が出てくるようになるんです。
だから一番安いからといって安易に発注するということはあまりないですね。


KAO:
選び方のコツがあるんですね。


鷲尾:
そう。でも最初から私だったらこれを選ぶというのは言わない。
いろいろ意見が出尽くして、鷲尾さん、どう思います?となったときに初めてやっぱりBだと思いますよと。
決定した後、ではB社に対してこう交渉していきましょうという話になるんです。
値段も二番手だったんだから、一番札になるべく近い数字にできるかどうかとか、仕様も予算的に厳しいようだったらこういう風に変えましょうとか。
契約の内容も全部文書に残して、次にその通りやっているかどうかのチェックもする。
本来なら管理組合のたとえば建設委員会のメンバーの方々の仕事なんですが、素人がここまでやるのは大変なわけですよ。


KAO:
その大変な部分を人に任せられるわけですね。大変な付加価値ですね。


インタビュー所感】今回は三協株式会社代表取締役三田春彦さんからのご紹介で建築診断協会代表鷲尾建志さんを訪ねました。
三田さんからはとても苦労した方だとお聞きしていたので、どんな話が聞けるのか興味津々伺いました。苦労を乗り越えた方というのは、たくさん知恵を持っていらっしゃいます。期待にたがわず、困難にぶつかったときのさまざまなヒントをいただいたインタビューでした。鷲尾さんご自身はとてもジェントルマンな印象で、穏やかさと優しさを湛えた方というのが第一印象でした。
ですが、お仕事の中身は意外や意外・・・。今ではこうして果敢に立ち向かう鷲尾さんですが、このお仕事が生業として成り立つまでにはいろいろな方のかかわりがあったそうです。
同時に果たしてこれで仕事になるのかという心の葛藤も。次回はそういう心と現実の経過を聞きながらさらに鷲尾さんの人生についてお聞きしています。


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